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2011/07/23

〜タンゴとクラシック音楽との出会い〜 別府アルゲリッチ音楽祭レポート


皆さんは、アルゼンチンと九州との意外な結びつきをご存知だろうか。「別府アルゲリッチ音楽祭」について聞いた事がある方も多いと思う。アルゼンチン出身のピアニストマルタ・アルゲリッチが総監督を務め、友人であり別府在住のピアニスト 伊藤京子と組んで毎年5月大分県で開催する音楽祭だ。1996年の開始以来第13回目を迎える今年のテーマは「Asia Meets Argentina〜異文化が出会う時」。5月8日から19日まで別府・大分・北九州の三都市で、それぞれ異なるプログラムで計7回のコンサートが行われた。私は、友人二人と14日に‘大分いいちこホール’で開催されたマラソン・コンサートに行く機会を得た。そのテーマは「タンゴとクラシックの出会い」で、ブエノス・アイレス在住経験がありタンゴファンである私の興味を十分にそそるものだった。



実は当初、ブエノス・アイレスからバンドネオンの巨匠ネストル・マルコーニ氏(ヨーヨーマと共演したことでも有名)がコンサートに出演予定で、個人的に大変楽しみにしていた。マルコーニは、バンドネオン奏者・作曲家・指揮者として現在世界最高峰と言われる重鎮だが、数年前から若者の育成にあたっているため、地元アルゼンチンでさえもなかなか彼の生の演奏を聴く機会は得られないからだ。しかし、3月に東日本を襲った大震災後、彼は来日をキャンセル。私は大変落胆したとともに、音楽祭自体の開催も危ぶんだのだが、日本を愛するアルゲリッチが音楽祭の決行を踏切ってくれ、音楽祭は無事大成功の末幕を閉じた。



私たちが会場入り口のアトリウムに入った時、タンゴの生演奏に合わせステップを踏む数組のペアの光景が目に飛び込んできた。何と入り口ホール内に‘仮設ミロンガ’が設置されていたのだ。演奏は地元のタンゴバンド‘オルケスタ・デ・タンゴ大分’の皆さんだ。そして客席に続くロビーでは、恐らくアルゼンチンのTVクルーが取材をしたり、既に到着している多くの観客達が今か今かと開演を待ちながら、所狭しと並べられたパンフレットやCD、本などを買おうとごった返していた。いよいよ気分が高揚してきた。



4時間に渡るコンサートでは、アルゲリッチの奔放で力強い演奏に度肝を抜かれたが、彼女の偉大さは誰もが知るところだ。クラシック奏者といえども、タンゴだろうが何だろうがジャンルを超えて弾きこなせるテクニックはあっぱれとしか言いようがない。しかしもっと驚いたのは、前述のマルコーニに師事した若干21歳のバンドネオン奏者三浦一馬が、期待以上の素晴らしい演奏を聴かせてくれたことだ。

ソロ演奏の一つピアソラ・メドレーは、「ブエノスアイレスの夏」(4曲構成「ブエノスアイレスの四季」の一曲で、フィギュアスケートの高橋大輔選手がフリー演技で「冬」と「春」を使っている)で始まり、聞く度に胸が熱くなる「アディオス・ノニーノ」(ピアソラの父が亡くなった時に父に捧げた曲)で締めくくるという構成で、ピアソラ好きの私としては演奏前から期待が高まっていた。通常はピアノやヴァイオリンなどが加わる六重奏で聞く事が殆どだが、三浦のソロは私の心をしっかりつかんだ見事な演奏だった。また、偶然にも私自身大好きなガーシュイン作曲の「ラプソディー・イン・ブルー」もソロで演奏された。これはご存知のようにピアノとオーケストラのための作品で、タンゴというよりむしろ‘ジャズとクラシックの融合’的な曲だ。最近では映画「のだめカンタービレ」のエンディングテーマとなっていたのが記憶に新しい。バンドネオンのソロ演奏がどのようなものになるのか、オリジナルのピアノ部分はまだしもオーケストラ部分は想像がつかなかったが、三浦はオリジナルとはひと味違った魅力ある演奏を聴かせてくれた。これも、メロディーと和音を同時に奏でられるバンドネオンという楽器と、三浦のようにそれを自在に操る事ができる数少ない逸材とのコラボによってのみ成し得た業なのだろう。若くして既に‘テクニック・豊かな感受性・パッションと冷静さ’を兼ね備え持つ三浦が、これからどんな演奏者へと成長して行くのか楽しみだ。近い将来、是非ティエンポのステージでも演奏してもらえれば嬉しい。

毎年リピーターも多く、クラシックファンを魅了し続ける「アルゲリッチ音楽祭」であるが、今回タンゴの魅力に開眼した新しいファン層を増やした事は間違いないと確信する。また、女子高生達がバンドネオンを‘アコーディオンのような不思議な楽器’と表現し興味を持って話しているのを耳にした。哀愁と色気を帯びた音色を放つこの楽器について興味を持つ人が少しでも増えれば嬉しい。音楽祭はアルゼンチンと九州との間の文化の絆作りに確実に貢献していると感じ、ブエノス・アイレスの街並みがまた懐かしくなった午後だった。



今回レポート記事はアヴェシリャ春口絵里さんが寄稿して下さいました。ありがとうございました!



アヴェシリヤ春口絵里
東京都出身。アメリカ人外交官である夫と共に2009年より福岡在住。アメリカ以外に、夫の赴任先であったブエノス・アイレス(アルゼンチン)とハノイ(ベトナム)での在住経験がある。



2011/07/10

フラメンコ講師Andressaが語るフラメンコ舞踊家インマクラーダ・オルテガ

私が初めてインマクラーダ・オルテガと出会ったのは2007年、彼女が初めてブラジルにやってきた時のこと。それ以来、舞踏家としてだけでなく、彼女の人間性にも大きく惹かれ、彼女の大ファンになりました。だから、その後2回ブラジルを訪れた際も、彼女のレッスンだけは逃せませんでした。独自の教授法に基づき、根気強く教えていくインマクラーダのレッスン。偉大な振付師である上に、賞賛すべき講師でもあります。

2009年来日の際の特別レッスンの模様


彼女の踊りは、卓越したテクニック、そしてパワフルでかつ美しい。感情表現の豊かさは特筆すべき点です。彼女が踊っている姿を前に、感動せず観ていられる人はいないはず。単にフラメンコのステップを踏んでいるのではない、インマクラーダの踊りにはそんな感覚を覚えます。

2009年 フラメンコショー

世界を舞台に活躍している著名なフラメンコ舞踊家の一人ですが、彼女自身はとても謙虚で、おおらかな人。人間的にも素晴らしい人物です。その人柄は、彼女のレッスンや舞台創りで直に触れてみると感じ取れます。
2年振りに来日するインマクラーダ・オルテガ。彼女のレッスンに参加し、また踊りを観ることはきっと素晴らしい経験になるはず。この機会を逃さず、彼女の素晴らしさを感じてもらいたいです。

video


■ 2011年9/24 (土) インマクラーダ・オルテガ フラメンコショー
■ インマクラーダ・オルテガ フラメンコ特別短期講座



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フラメンコ講座講師:
Andressa Abrantes ~ アンドレサ・アブランテス

10歳より踊り手“シモネ・アブランテ”を師に舞踊を学び始める。
インマクラーダ・オルテガ、ドミンゴ・オルテガ、カルメン・ラ・タレゴナ、ポル・バケロ、クリストバル・レジェス、テレサ・マキシモ、ファビオ・ロドリゲスといった様々な講師によるクラスを取る。
インマクラーダ・オルテガプロデュースによるショー“インマクラーダ・オルテガ”に出演。また、師ドミンゴ・オルテガとインマクラーダ・オルテガプロデュース、主演のショー“ウン・ポキート・ポル・オルテガ”にも出演。
ベルリンでワークショップを開講し、踊り手としてショーにも出演。
15歳でアルテ・フラメンカ・カンパニーに所属。ブラジル各地で様々なショーに出演する。