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2010/10/21

東京からのティエンポ賛歌

昨年までスペイン語講座を受講され、現在は東京にお住まいのティエンポの会員 森本芳樹 (九州大学名誉教授、専門: 西洋中世史)さん。
10/1 (金)に開催されたティエンポのグランドオープニングレセプションに東京から駆けつけて下さいました。
「東京からのティエンポ賛歌」と題した素敵な祝辞もいただきましたので、この場でご紹介します。


森本芳樹、76歳の年金生活者です。昨年の総会ではサンチアゴ・エレラ君のお勧めで、間もなく東京へ引っ越す予定だった私は、ティエンポに3年半通った印象をまとめ、お別れの挨拶をさせていただきました。東京で約1年暮らしこの間スペイン語学校に通いましたが、ティエンポが素晴らしかったという思いがますます強くなっている次第です。今日は再び機会を頂きましたので、昨年に続いてティエンポの「賛歌」を話させていただきます。

まず昨年私が強調したことをまとめてみますと、それはティエンポがいろいろな個性を持った方々の生き生きとした共同体だということです。先生方はいろいろな国の男女で肌の色もずいぶん違っており、スペイン語の先生、ダンスの達人、音楽やアートの専門家という構成で、個性を遠慮なく出して授業をし、またイヴェントでも活動しておられます。生徒も老若、男女、経歴、仕事など実に様々で、こちらも個性に応じて自由自在に振舞っています。特に感じたのはその中で、 ティエンポがイベロアメリカーナ文化が一つのまとまりだということを感じさせてくれながら、同時にそれが多様な個人の集合として、従って日々刻々一人一人の活動によって作り出され、新しくされていく有機体だということです。そして福岡という独特な場所にあることで、この文化に新たな色合いを加えているのではないかと思えました。


ますます活動を続けて下さるようにお祈りして、私は9月末には東京へ引っ越しました。それから1年間日本でのスペイン語学習の中心であるセルヴァンテス学院通ってみて、結局「あーティエンポはよかった」とつくづく思っているというのが私の経験です。
セルヴァンテス学院は数年前に8階建ての立派な専用の建物が出来て、その全部を使っています。7階全部を占める図書館やコンピューターによる自習設備も整った立派な施設です。スペイン政府が世界的に設けているセルヴァンテス文化センターの一部であり、スペイン語を中心にスペイン文化を国際的に広めていくための公式の組織です。語学以外の催しもありますが、授業としてダンスや芸術はありません。スペイン語の学校としてクラスの数が多く、入門から上級までの5段階のクラスがそれぞれ複数あり、おのおのの水準が決められた時間数で必ず終わるように進められています。時間通りに始まって終わり、無駄な話はほとんどありません。スペイン語にはDELEという国際的な資格試験があって、セルヴァンテス学院もこれにたくさん合格させることに大きな目標があるようです。


このようにセルヴァンテス学院はスペイン語学校としてはほとんど理想的ですが、ティエンポとはもちろん大きな違いがあります。まず建物に入ってすぐ、セルヴァンテスの受付でもオーラという挨拶は聞けますが、その辺りに先生や生徒や事務局の方々が何人かたむろして雑談している、そこにダンスの衣装になった男女もいるという、ティエンポのような光景はありません。いろいろな空間を使ってティエンポのアートの先生の作品を展覧しているという賑やかさも見られません。スペイン語のクラスにちょっと離れた教室からサルサやタンゴが軽く聞こえてくるという、ティエンポ特有の楽しさもセルヴァンテスにはないのです。
セルヴァンテスでは時間厳守で、先生の遅刻など考えられませんが、興が乗った先生が面白い話を止められなくて授業が終わらないということもなく、そうした機会に教科書にはない面白いことを学んだり、突然生徒の一人が喋りだしたりするという、ティエンポ特有の雰囲気もないのです。
私のよく出席したシネマテカでは、ティエンポにはちゃんとした映写室がなくて映写効果が悪いのは確かですが、映画の選択がとても個性的で、古くても当時大いに問題となった作品や、フランコ独裁期の問題のような社会的な問題作が多い、と思いました。その後の討論が、責任者の先生がどんどん水を向けてきて、スペイン語なのではっきりとは分からないままでも、面白いいくつもの議論を聞くことが出来たのでした。

最後にもう一つ強調したいのは、ティエンポでのサンチョパンサの役割です。シネマテカのときに、まず入場料代わりにワインをサンチョパンサで買って持ち込み、ちびちびやりながら映画を見るというのが私にはとても楽しみでした。サンチョパンサでアルゼンチンのワインを一本とって友達と喋りながら飲み、余ったらビンごともって帰れる、というのも良心的な商売ですが、いろいろなイヴェントがサンチョパンサで行われて、このカフェレストランはまさにティエンポと一体となっていました。私には引越し前最後の授業の場所を、先生にお願いしてサンチョパンサでしてもらい、そこに私が同級の人達を招待してワインで別れを惜しみながら授業をやったという経験があり、とても貴重な思い出となっています。

こうしてティエンポとセルヴァンテスを比べてここで強調したいのは、イベロアメリカ文化センターとしてセルヴァンテスはティエンポに取って代わることはできないことです。几帳面さに劣り、設備がより悪くても、ティエンポが特に多種多様な個人の集まりとして作り出している雰囲気こそが、イベロアメリカの文化を代表していると思われるからです。それはいろいろ雑多な要素や個人をさらに結集していく母胎として、もっと働いていく力をもっていると思います。

設備が新しくなったといってけっしてここで変質することなく、こうして集まっていらっしゃる皆様がティエンポを今までどおりの仕方で、ますます盛んにしてくださるよう祈っております。 

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